東京工業大学は南海電気鉄道株式会社(以下、南海電鉄)と、高野線列車内の混雑状況の可視化に関する実証実験を2023年1月27日から3月31日にかけて実施します。
本実証実験は、東工大 環境・社会理工学院の辻本研究室が開発した「列車内の混雑度解析技術」(特許出願中)の精度を検証するものです。同研究室がこれまでの実証実験で培ってきた技術に加え、今回は新たに鉄道運行データと連携し、急行や普通、回送列車などの情報を組み込むことで、より詳細な混雑情報の提供ができるようになります。このような詳細情報をデジタルサイネージに表示して可視化し、乗車前の乗客にリアルタイムで提供することにより、「できるだけ混雑を避けたい」という乗客のニーズに応えるとともに、アフターコロナを見据えた各列車の混雑状況の把握を目的とします。
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本実証実験は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が実施する支援事業、大学発新産業創出プログラム大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援に採択された、東京工業大学、東京大学、早稲田大学を主幹とする「Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE:ジータイ)」内のGAPファンドの支援により実施されており、支援終了後は、東京工業大学発のベンチャーによる事業化を目指しています。
概要
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1.
実施期間
2023年1月27日(金)始発列車~3月31日(金)最終列車(予定) -
2.
対象駅
高野線北野田駅・大阪狭山市駅 -
3.
実験方法
スマートフォンのブルートゥース信号※をもとに「混雑解析装置」で解析したデータと「高速度カメラ」で撮影した実際の車内のデータを分析し、「混雑表示サイネージ」にてリアルタイムで可視化します。 -
4.
本実証実験のねらい
得られたデータに基づき、実証実験前後で混雑状況がどの程度解消されたかを評価します。
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ブルートゥースは、Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です。
本実証実験内容の詳細
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1.
設置場所
北野田駅 上り(難波方面)ホーム
大阪狭山市駅 上り(難波方面)ホーム -
2.
設置機器と台数
「混雑解析装置」…両駅に各1台
「高速度カメラ」…大阪狭山市駅に1台
「混雑度表示サイネージ」…北野田駅に1台 - 3. 実証実験におけるイメージと流れ
期間1【実証実験開始~2月末ごろ】実験前情報の取得と精度化
- 大阪狭山市駅と北野田駅に設置した「混雑解析装置」で、乗客スマートフォンのブルートゥース信号を取得し、クラウド上のAIにて、同駅を出発する列車の混雑状況を解析します。(※1)
- 大阪狭山市駅に設置した「高速度カメラ」で、AIの解析精度を高めるため、駅のホーム端から車内を撮影・測定し、混雑状況なども組み合わせて、クラウド上のAIのチューニングを行います。(※2)
- ※1
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ブルートゥース信号は電波信号強度(RSSI)のみを測定・記録し、端末の特定につながる情報は含まれません。また、ブルートゥース信号を使って解析するため、気象条件に大きく影響されることがなく、安定的かつ精度が高い混雑状況の取得が可能です。
- ※2
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高速度カメラは顔識別機能を有しておらず、解析後のデータには個人の特定につながる情報は含まれません。さらに画像データは、南海電鉄と東京工業大学間でのみおのおの取り扱い、第三者がアクセスできない環境の下で、列車内の乗車人数の解析に限定して使用し、解析完了後、速やかに削除します。
期間2【2月末ごろ~3月末まで】取得情報のリアルタイムでの可視化
「混雑解析装置」「高速度カメラ」での解析データをもとに、北野田駅ホームに設置する「混雑度表示サイネージ」にて、北野田駅に到着する列車の各車両別の混雑状況をリアルタイムで案内します。
期間3【3月末~(実証実験期間終了後)】実証実験の分析
「混雑解析装置」で得られたデータを、「混雑度表示サイネージ」の設置前後(期間1と期間2)で比較することにより、「混雑情報が乗客の行動変容にどの程度結びついたか」を分析するとともに、本実証実験を通じた当該技術の評価を行います。
- プレスリリース 「高野線列車内の混雑状況の可視化」に関する実証実験を行います —東京工業大学と協働で、 Bluetooth信号を活用して、デジタルサイネージにリアルタイムで混雑情報を表示—
- 「列車内の混雑状況を可視化する」実証実験を東急電鉄、阪急電鉄と実施|東工大ニュース
- 辻本将晴 Masaharu Tsujimoto|研究者検索システム 東京工業大学STARサーチ
- 辻本研究室
- 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系
- 南海電気鉄道株式会社