東京工業大学は、1990年に日本初の生命理工学の教育研究を担う学部として生命理工学部を設置しました。その後、1992年に大学院生命理工学研究科を創立、2016年に学部と大学院の一体化教育を実施する教育研究組織「生命理工学院」への変革を経て、2022年に研究科創立から30年の節目を迎えました。30周年にあたり、11月14日に本学すずかけ台キャンパス大学会館すずかけホールにて、記念式典・記念講演会・懇談会が開催されました。
記念式典
記念式典には、来賓、本学役員、名誉教授ならびに生命理工学院の元教員、卒業生、現教員など、110人以上が参加しました。
開会の辞に続き、梶原将生命理工学院長が生命理工学院の歴史・変革、卒業生の活躍を紹介し、今後の生命理工学院の教育・研究推進、東京医科歯科大学との統合に伴う医学・歯学との連携における生命理工学院の積極的貢献についての決意などを述べました。
益一哉学長は、東京工業大学と東京医科歯科大学との統合に関して、医歯理工学の新たなグランドデザインのもと、これまで以上に生命理工学院が存在感を示すことへの期待について語りました。
来賓の祝辞として、文部科学省の柳孝事務次官が世界における生命理工学分野において学術のみならず、新たな産業分野のイノベーション創出にも貢献してきたことを評価し世界の教育研究の拠点として、新たな価値創造、研究成果の発信、人材の輩出を期待すると述べました。
一般社団法人国立大学協会会長である筑波大学の永田恭介学長は、東工大在任時の思い出を語ったうえで、自前の予算化確保、産官学の連携強化のさらなる促進、組織的な人的管理・時間管理の効率化による研究・教育の世界レベルへの向上と、統合によってしか達成できないことへの取り組み、その中で、生命理工学院が中心的な役割を果たすことを期待すると話しました。
東京工業大学元学長の相澤益男名誉教授はこれまでに生命理工学院が東工大からの大きな期待に後押しされ、バイオの分野を切り開いてきたことを紹介し、東京医科歯科大学との統合による大学全体の躍進のために、生命理工学院が一翼となって、これまで以上に飛躍することへ期待を寄せました。
記念講演会・懇談会
記念式典に引き続いて開催された記念講演会では、2016年ノーベル生理学・医学賞の受賞者で、本学細胞制御工学研究センター長の大隅良典栄誉教授が「生命理工学院の未来に期待を込めて」と題し、生命理工学院での思い出やノーベル賞の受賞につながる「オートファジーの仕組みの解明」について講演しました。
大隅栄誉教授は短期的な経済効率が優先される社会における基礎研究の軽視について率直に語り、東工大にしかない特徴のある研究活動への取り組みを生命理工学院への期待を表しました。大隅栄誉教授は続けて、社会の変化に対する認識の重要性、長期的な課題への投資の必要性、大学での研究と企業での開発研究の区別化、さらには知的活動へのリスペクトを高める努力などが大学として取り組むべきであると、今後の大学の目指すべき道筋についても語りました。
2つ目の講演は、生命理工学部の卒業生であるキリンホールディングス株式会社R&D本部キリン中央研究所長の矢島宏昭氏が「バイオサイエンス研究成果の社会実装」について話をしました。矢島氏はバイオ医薬品の開発・改良における、有効性および安全の担保の重要性や、特定保健用食品、先端医療への取り組みを紹介しました。
続く懇談会では、元大学院生命理工学研究科長の関根光雄名誉教授と生命理工同窓会会長の溝尻亮氏が祝辞を述べ、渡辺治理事・副学長(研究担当)と元生命理工学院長の三原久和副学長(戦略構想担当)が乾杯の発声をしました。
新型コロナウイルス感染症に対する蔓延防止を徹底した中での懇談となりましたが、今後の生命理工学院の発展の方向性を議論する重要な情報交換・意見交換の場となりました。